視力と視野の違いと障害年金
「文字は読めるのに、物によくぶつかる」
「化粧の時、片目を閉じて眉を書こうとするとうまく書けない」
「大きく動かさないとパソコンのカーソルが見つからない」
こうした日常のちょっとした「?」には、「視野」障害が隠れているかもしれません。
眼鏡を外すと文字がぼやける、といった経験から、視力の低下は想像できる方も多いでしょう。一方、視野の障害による見にくさは、周囲に伝わりにくいものです。
第1回は、視力と視野の違い、暮らしの困りごと、職場での早期発見を後押しする動きについて、障害年金との関わりも交えてご紹介します。

1.視力は「細かいものを見分ける力」、視野は「見える範囲と感度」
視力とは、文字や物の形などを細かく見分ける力です。視力検査では、主に見ようとしている中心部分の働きを調べます。
一方、視野とは、一点を見つめたときに見える範囲のことです。視野検査では、その範囲に加えて、場所ごとにどれくらいの弱い光まで感じ取れるかという「感度」も調べます。
中心の文字が読めても、周囲に感度の低下した部分が存在することがあります。視力の数値だけでは、見え方の全体は分からないのです。〔参考:日本眼科医会「よくわかる緑内障」〕
2.視野が欠けても、黒く見えるわけではありません
「欠ける」と聞くと、景色の一部が黒く塗りつぶされた状態を想像するかもしれません。実際には、あるはずのものが「消える」と表現する方が正しいと思われます。つまり視線を動かすことで見えていたものが視野の欠けた領域にすっぽりと入って消えてしまうのです。そして脳が周囲の情報をもとに見えない部分を補い周囲の景色になじませ何事もなかった風景に変わります。
また人の視野は馬などと違い、ほとんど両眼の視野が重なっています。そのため片目に進行した視野障害があってもなかなか気づけません。かすむ、ぼやける、消えると自覚する時には、視野障害はかなり進行してしまっている場合があります。
3.「読めるのに、気づかない」―暮らしの中の困りごと
見えにくい場所や程度によって、困る場面は異なります。次のようなことが、その一例です。
- 周辺が見えにくい: 横から近づく人や物に気づかずぶつかる。
- 下のほうが見えにくい: 足元の段差に気づけない。
- 中心やその近くが見えにくい: 文字の一部を捉えにくく、文章の続きを追うことが難しい。
また、網膜色素変性などでは、視野が狭くなることに加え、暗い場所で見えにくくなる「夜盲」が起こります。昼間は歩ける場所でも、夕方や暗くなると移動が困難な場合があります。〔参考:日本眼科学会「網膜色素変性」〕
こうした見え方は、経験がなければ想像しづらいものです。「スマートフォンは読めるのに、なぜ物にぶつかるの?」と、不思議に思われることもあるでしょう。
けれども、あるものが見えることと、生活に不自由がないことは別です。「どんな場面で困るのか」を具体的に聞くことが、その方への理解につながります。
4.職場でも、目の病気の早期発見を後押しする動き
2026年9月28日、厚生労働省の審議会に示された「職場の健康づくりに関する指針(THP指針)」の改正案では、早期発見・早期治療に取り組む対象として「眼科疾患」が明記されました。
企業の健康診断の機会を活用した検診の受診機会の提供や、結果に応じた精密検査の受診勧奨が示されています。9月30日時点では改正案であり、眼科検診の一律実施が義務化されたということではありません。〔参考:厚生労働省・THP指針の改正概要〕
緑内障や糖尿病網膜症は、自覚症状が乏しいまま何年もかけて徐々に進行します。眼底検査などを通じて自覚症状が出る前に異常を見つけ、治療につなげることが大切です。なんだか最近見にくいなと感じたら早めに眼科を受診しましょう。〔参考:日本眼科医会「目の定期検査のすすめ」〕
5.障害年金では、視野の障害も認定の対象です
目の障害による障害年金は、視力だけで判断されるものではありません。視野についても認定基準があり、検査結果に基づいて障害の程度が判断されます。視力の数値のように自分の視野を数値化して把握することは困難です。
緑内障などで視野検査を定期的に行っているのであれば、例えばハンフリー視野計での検査ならVFI(Visial Field index:視野機能を%で表したもの)は何%かを検査員に聞いて把握しておくのもよいと思います。
「視力があるから対象にならない」わけではない一方で、病名や生活上の困りごとだけで受給が決まるわけでもありません。受給には初診日や保険料の納付状況など、個別の要件の確認が必要です。〔参考:日本年金機構「障害認定基準」「障害年金」、下記掲載〕
おわりに
障害年金についてはあま社会保険労務士事務所にお任せください。ご相談だけでもたまわります。今回ははじめてのブログを最後までお読みいただきありがとうございました。
これからも皆様のお役に立てるような記事を配信したいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
CO×社労士 服部洋子 (*CO:視能訓練士)
日本眼科医会:よくわかる緑内障―診断と治療―
日本眼科医会:緑内障ってどんな病気?
日本眼科医会:目の定期検査のすすめ
日本眼科学会:網膜色素変性
厚生労働省:「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」の改正について
日本年金機構:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準
日本年金機構:障害年金
※制度・改正案に関する情報は、2026年9月30日時点のものです。


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